自費出版への道 11 アパート事業部でオーナーズ倶楽部通信を発行したお話し

奮闘記

 個人住宅とアパートの営業というのは、まるで違います。

 個人住宅、いわゆるマイホームは当然ながら個人がお客様です。
 いまどんなところに住んでいて、どんなところに不満があるのか。新しい家はどんな家にしたいのか、それを資金計画とともに組み立てていきます。

 経験上思うのですが、個人のお客様は新しい家に明確なビジョンを持っている人は少ないです。だから住宅展示場で最新の間取りや設備、機能を紹介して「夢を膨らませて」頂くのですが、多くの場合、いま住んでいる家のどこかをなんとかしたいと思ったことが家を建てようという動機に繋がっています。

 子どもが生まれたとか、いまの家のキッチンが古くなってきたとか、収納が足りないとか、日常生活の中に新しい家へのヒントがあることが多いです。

 それに古い家の建て替えでない限り、土地から求める人も多く、その場合にはいまの生活圏を維持するのかしないのか、という選択をも求められますが、その決定権は収入状態に依存します。つまり土地と家とを合わせた資金計画で、土地はいくら、建物はいくらという風に、金銭的な枠組みの中で決めていく必要が出てくるからです。ない袖は振れないと言うことですね。

 それでも、真っ新な土地の上にお客様の希望を聞いて、それを可能な限り間取りという姿に変換していく仕事はとても楽しかったです。私たちが描いた間取りをお客様に提示して、ここはこう、収納はこちらに、キッチンはこんな風に、壁紙の色、照明やカーテン、畳の縁のデザインやドアの取っ手の色などを決めていくのは、正直大変ですけど、最も夢が膨らむ時間ですね。

 一方のアパートは全く違うと言ってもいいです。

 土地を持っているお客様がいて、その多くは農家でしたが、もう農業を辞めるので土地の有効活用をしたいとか、あるいは相続税納税資金対策であったり、相続そのものに対する遺産分割の目的もあったりします。

 つまり、アパートの場合は自分で住むために建てるのではなく、事業用の収益物件として建てることになるので、事業計画を立てることになります。

 すると営業の知識としても様々な税制を知らなくてはなりませんし、税理士や銀行、農協といった金融機関との連携も必要になってきます。土地に対する法律も個人住宅に比べてより広く深い知識が必要になってきます。

 この業界に必須と言われる宅地建物取引主任者の資格は、入社2年目に取得していましたが、平成8年に一念発起して、当時広がり始めていたファイナンシャル・プランナーの資格を取りました。

 このとき勉強した金融商品や所得税のしくみ、ライフプランニングの考え方は、その後、とても役に立ちました。金融商品のことは全く分からなかったので「月間マネー」という雑誌を買って、最初は何が書いてあるのか全く分かりませんでしたが、とりあえず読むだけ読む、というスタイルで読んでいました。

 このブログを書くために調べてみたら、もう、この雑誌は発刊されていないようで、「月刊マネー」で検索すると「NISA」関係の雑誌が表示されるばかり。

 またしても余談になりますが、この「NISA」。多くの場合、円を売って、ドル建ての金融商品を買っているらしく、なるほど円安ドル高になる理由はこれかと、得心した覚えがあります。
 国が進めるものにロクなものはないので(お枠もそうでしょ)、私は一切手を出していません。

 アパートの営業を担当するようになってはじめて、私の自費出版への道が開きます。

 アパートのオーナーさんは土地持ちの方が多く、同じ会社で一度に複数棟の契約をしたり、数年を掛けて複数棟のアパートを同じ会社、あるいは違う会社で建てることが多くあります。なので、自分のオーナーさんを他社にとられないように確実にグリップしておく必要があります。

 そこで私が始めたのが、「オーナーズ倶楽部通信」という会報の発行です。

 中学の学級新聞にはじまり、高校、大学と培ってきた「書く」ということを仕事として活用することになったのです。

 今でも良く覚えていますが、オーナーズ倶楽部通信の第1号の1面表紙には、建築基準法第1章(総則)第1条(目的)を書きました。

「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」

 会報のサイズはA4版。その中央に縦に2行。この条文だけを載せたのです。

 どこの新聞社の新聞でもいいですが、一面を思い浮かべてみてください。
 朝日新聞とか毎日新聞とか日本経済新聞でもいいです。あの1面のど真ん中にこの建築基準法第1章第1条だけが、どーん! と、載っているのです。

 この条文を載せたのには理由があって、アパートそのものは確かに事業用の収益物件ですが、その一つひとつの部屋に入居するのは一人の人間だということです。そして私の大学時代がそうだったように、住んだアパートの部屋でその人の人生が作られていくのです。そして私が住んでいたアパートの大家さんは、このことをとても良く理解されていた方でした。だから、私たちのオーナーさんにもそのことを知っていて欲しい、そのためにも建築基準法の意義や意味を知っていて欲しかったのです。

 オーナーズ倶楽部では、オーナーさんたちと研修旅行にも行きました。
 行ったのは岩手県の盛岡や奥州市、水沢市辺りだったと思います。

 岩手の曲屋南部鉄器の資料館、それに当時の大河ドラマ「炎立つ」や映画「陰陽師」の撮影場所となった「えさし藤原の里」などを訪ねた思い出がありますね。当然に、この研修旅行のことも記事にしました。

 奥州市は、大谷翔平選手の出身地でもありますが、のちにこのブログで触れることとなる、古代東北の英雄である阿弖流為あてるいが朝廷軍をボコボコにした巣伏の古戦場があることでも有名ですね。

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