自費出版への道 24 出版契約から著者校正までのお話

奮闘記

 文芸社との出版契約は、令和4年(2022年)4月1日付けで行われました。
 私の著書「オブシディアンの指環」は、上下巻での刊行予定でしたので、出版契約も上巻、下巻それぞれに結ぶこととなりました。

 正式な出版契約は初めてのことだったので、契約書の冒頭に著者名(いわゆるペンネーム、私の場合は蘇芳夏生)と書名が来て、そのことについて著作権者である私個人と文芸社の名前が来るという順番に「なるほど、そうなるのか」と、新しい発見がありました。

 次に来るのが、入金です。当然ですね。商取引ですから。
 契約書を銀行に持って行って、4月7日に融資を実行。即日、文芸社への振り込みを行いました。
 私は一括で支払いましたが、2分割、3分割で支払う方法もあるようです。

 2分割の場合は、契約時に1/2。初回入金から5ヵ月後に残りの1/2を、
 3分割の場合には、契約時に1/3、初回入金から3ヵ月度に1/3、3回目の支払は初回入金から5ヵ月後までに残りの1/3を入金することになります。
 つまり、契約から5ヵ月後までには全ての入金を完了する必要があるということです。

 文芸社サイドで入金の確認が行われると「ご入金確認書」という文書が後日、郵便で届きます。決して少なくない金額なので、こういうところはキッチリしていて安心感があります。
 文書には文芸社の印と、担当者の印の押印がありました。

 文芸社との連絡は文書とメール、電話で行われましたが、実は私、営業担当者と編集担当者と面談しています。これはブックパレットとのやり取りがメールのみで、全く顔の見えない取引が嫌だったことによるもので、営業担当者とは4月8日に、編集担当者とは5月13日に文芸社本社を訪れて会いました。

 会ったのは、この1度切りでしたが、やはり直接顔を合わせた相手とメールや電話でのやり取りをするのは、顔の見えない相手とのやり取りとは違います。
 相手の顔がわかっていると、言葉や文字が生きるのです。

 編集担当者と会う前に、文芸社から「編集を始めるに当たってのアンケート」が送られてきました。
 そこには次のような項目がありました。
 ① 本のタイトル名の確認
 ② 実名を使うか、ペンネームを使うかの著者名の確認
 ③ 編集者による文章への手入れを希望するかどうか
 ④ 先に送った原稿で進めてよいかどうか
 ⑤ 追加の原稿(あとがきとか)が、あるかどうか
 ⑥ 先に送った原稿に記載されていない写真やイラストの追加があるかどうか
 ⑦ その他の希望や質問を書く欄があり、カバーイメージなどを書くことが出来ました。

 一応、記載して送りましたが、同時に編集担当者と直接、話をして確認をしたくて、文芸社まで足を運んだわけです。

 このアンケートで注目したいのは、③の質問です。
 「編集者による原稿への手入れ」ですが、あくまで「用字用語の表記統一や誤字脱字のチェック、句読点の整理、改行の確認など」に限られています。つまり、ストーリーそのものや内容については触れない、ということです。

 このあたりが商業出版とは違うところなんでしょうね。
 これから自費出版を考えている方は「自費出版とは出版の部分をサポートいただくだけで、それ以外のすべては自己責任による出版なんだ」ということを、押さえておけばいいと思います。

 ここをきちんと理解しておかないと、トラブルの原因になりかねません。

 実際、私も文芸社と契約する前に、文芸社に関する様々な口コミを見ました。
 ・売れると言われたから契約したのに、全然売れない
 ・自分で印刷すれば、もっと安くすんだのに
 ・契約期間が終了したら、一切のサポートがなくなった
 ・文芸社のコンテストに応募をしたが落選した。その後、文芸社から自費出版の営業電話がかかってきて、1,000冊出版の見積もりをお願いしたら、200万円だった。自分で印刷すればもっと安い。詐欺だ。

 まぁ、どれもこれも何を言っているんだというクレーム(いちゃもん)にしか見えないですね。

 私の経験上、文芸社は歴史文芸賞においても、自費出版のために提出した原稿についても、「これは売れる」とは、一言も言っていません。それはそうです。そんなことは誰も保証できません。ましてや、出版社がそれを言ってしまったら、それこそ責任問題になります。だから「これは売れる」などと、出版社は口が裂けてもいうはずがないのです。

 自分が印刷した方が安くすんだと思うのなら、自分で印刷・出版すればいいだけの話ですし、契約期間が満了したらサポートが終了するのは当たり前の話です。
 これも私の経験上ですが、契約期間が終了した後も文芸社は、ちゃんと営業をかけてくれます。後に触れることになりますが、私の場合、契約期間は1年で、契約が終了した後も「過去に文芸社で出版された方を対象に」という条件でのコンテストがあり、対象作品は商業出版してくれます。
 私も「オブシディアンの指輪 上下巻」に続く続編を書いていたので、それを応募しました。これについても、また改めて書いていこうと思います。

 そもそも本が売れないのは、文芸社のせいではありません。
 何度も書きましたが、一つの本屋さんに名もない作家の本が置かれていても、それはあまたの星の中から、たった一つの星を選び出すよりも奇跡的なことなのです。

 『余命10年』とか『血液型別自分の説明書』とか、文芸社から出版された自費出版の本がありますが、これはあくまで例外です。
 世間で売れているのは、著名人や芸能人の書いた本や本屋大賞受賞作品とか、芥川賞とか直木賞を受賞した作品とか、各種コンテストで大賞に輝いた作品や作家さんの本ばかりで、いってみれば最初から商業ベースに乗っている作品です。

 私の書いた「オブシディアンの指輪」についてですが、私は世界で最も面白くて興味深い小説だと自信を持っていますが、それはあくまで著者である自己評価に過ぎません。自分の好きなことを自分の好きなように書いているのですから、当たり前ですよね。

 ただ『血液型別 自分の説明書』は、ヒットするまで5年の月日を要しているらしいですから、「オブシディアンの指輪」も、もうそろそろヒットするのではないかと、考えている自分がいることもまた、確かなことなのですが。
 そう思うこともまた、自費出版の楽しみの一つだと考えています。

 さて、話を元に戻しましょう。

 編集者との面談が終わってからは、メールでのやりとりが中心になりまた。
 5月、6月と、細かい図表データや表紙のデータのやりとりが続きました。
 記録によれば、これらのやりとりは6月30日に終了しています。
 そして、8月26日。ようやく編集者から著者校正のための原稿が届きました。

 著者校正とは、編集者が手を入れてくれた表記の揺れとか、誤字脱字のチェック、あるいは編集者による表記の提案を受け入れるか否か、などのチェックです。内容そのものを変更するプロセスではありません。

 内容そのものには触れないとはいえ、編集者によるチェックには驚きました。
 というより、自分が思っていたより誤字脱字の多いことに愕然としました。一太郎のチェック機能を使って洗ったはずなのに。。。と、思いました。
 また、例えば「嘘(うそ)」という文字は、出版界では「噓」という文字を使うこと、「噛む」は「嚙む」に直し、「行く」と「いく」の表記の揺れなど、ほぼすべてのページにチェックが入っていました。

 著者校正は、そのすべてに「赤」を入れていきます。
 鉛筆書きされた編集者の提案を受け入れる場合には、当該箇所に赤ペンで○印をつけていきます。
 そうではなく、著者のこだわりがある箇所には、その旨を記載していきます。

 毎日、毎日、夜遅くまで私の校正は続きました。
 だって、6月末から2ヶ月半。自分の本の卵がカタチになって目の前にあるのです。楽しくて仕方ありませんでした。

 校正原稿が届いてから、わずか10日で校正を終えて、9月5日に原稿を文芸社宛に送り、翌6日には編集者から原稿を受け取った旨のメールをいただきました。
 その後、表紙のデザイン案が送られてきたり、表紙の帯に記載する文章の検討などがあり、日々、少しずつ前に進んでいるのが分かります。
 残された作業も少なくなってきました。
 出版予定は12月です。

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